星の精霊と光の女神
人になった精霊のおはなし


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数多の精霊の中でも、星の精霊たちは、とりわけ永い命を持っていました。
光の女神ルクスさまを主とし、暗闇の中で生きて、自分の命をきらきらと輝かせるのが、彼らの役目でした。
しかし、他の精霊と違い、美しい大地で自由に飛び回ることは赦されなかったのです。
大地に憧れる星の精霊たちを見て、ルクスさまはかわいそうに思われました。
ある日、星の精霊たちを集め、ルクスさまが仰いました。

――おまえたちは、あの大地で飛び回ってみたいですか?

星の精霊たちは、皆、飛び回ってみたいと顔を輝かせます。

――わかりました。おまえたちを、大地へ降ろしてあげましょう。ただし、私が許した時だけですよ。

星の精霊たちは、とても喜びました。
そんな彼らに、ルクスさまは、一粒の種を見せられました。

――この種があの大地で育ち、立派な樹となるまで待つのです。それを楽しみにして、役目に励みなさい。

星の精霊たちは、皆で遠い大地を眺めました。楽しみだねとおしゃべりし、きらきらと夜を彩りました。
永い命を持つ星の精霊たちにとって、樹が育つのを待つのは、つらいことではありませんでした。
二百年がたち、ふたたび星の精霊たちを集め、ルクスさまが仰いました。

――おまえたち、よくがんばりましたね。今日は、あの大地へ降りるのを許してあげましょう。

ルクスさまは、星の精霊たちのために、魔力の道を作られました。行き先は、立派に育った、神樹ユグドラシルです。
魔力の道を、星の精霊たちは仲良く順番に降りてゆきました。
 
 
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| 創作覚書 | 00:22 | comments(0) |
薄氷のフォスフォラス 七
「……以上が、アンディーブ公国の見解です。この度の出張にて、特別魔法陣の配置も完了いたしましたので、来月10日より運用を開始いたします。詳細は明日書類にまとめますわ。報告は以上です。」

国王陛下を前に、私は今回の出張の報告を終え、礼をした。
陛下の視線が、いつも通り冷たく私を刺す。……いや、いつもであれば、刺すような圧はない。周りに他の人間がいるような、いつもの、公的な場であれば。
 
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| 創作覚書 | 13:44 | comments(0) |
薄氷のフォスフォラス 六
噴水広場沿いのカフェレストランの、窓際の席。
入ったことない店だったけどうまいな!と、嬉しそうにローズマリーのハンバーグを頬張っているのは、昨年知り合った友人・アレックスさんだ。
今日は休日。そして、1年で1番大きい城下町バザーの日だ。本来であれば私は出勤している筈だったけれど、制服ではなく私服を着て、海老のジェノベーゼを味わっている。
 
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| 創作覚書 | 20:52 | comments(0) |
薄氷のフォスフォラス 五
17時、終業を告げる鐘を聞きながら、私は報告書に目を通していた。

先日、南の国境付近の教会で起きた夜間の火災。すぐに警備隊員と神官が駆け付けたため、怪我人もなく、教会が一部燃えただけで済んだ。原因は不明。建物の修繕、結界の夜間オートシステムの見直し、原因究明、警備の増員……ひとつの事件で、解決しなければならないことは山積みになる。同様の事件はこれで3件目。城下町でも噂になっていた。
この事件の、原因に繋がる痕跡が発見され、結界オートシステムの異常が発生したと疑われる……ということが、今目にしている報告書に書かれていた。マナとの干渉か、人為的なものなのか。これまでにはなかったことが急に発生し始めたことを考えると、おそらく人為的な何かだろう。

夜間の結界維持のための人員の派遣と、オートシステムの魔法陣の検証をする専門家の派遣は済んだ。検証は今夜行われる予定だから、明日には報告が上がってくるはず。国王陛下への報告は、明日まとめよう。城内の結界の担当への書類を書き終え、封筒にまとめる。今日できる事はこれで終わった。
 
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| 創作覚書 | 10:40 | comments(0) |
薄氷のフォスフォラス 四
「デュカさん、今日は少しお話をしませんか?」

15時。提出された書類に問題がないことを確認し、私は小さな部下に声をかけた。

「書類に問題はありませんでしたから、今日はここまでにして、少し。たしかスクールの日だけれど……。」
「スクールには、欠席の連絡を入れていますわ。……私も、アナマリアさんとお話がしたいです。」

顔をあげたデュカさんが微笑む。事情がわかっているからこそ、その微笑みに心が締め付けられるような気がした。

「では、私はお茶を淹れますから、デュカさんには来客用の部屋の準備をお願いしてもいい?」
「はい、すぐに準備いたしますわ。」
 
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| 創作覚書 | 23:48 | comments(0) |
薄氷のフォスフォラス 三
今日は、仕事が少し早く終わった。

「あとは明日にして大丈夫ね。今日はスクールの日ではないでしょう?早めにお帰りなさいな。たまにはゆっくりと休むことが大事だわ。」

そう言ってくれたのは、神官になってからずっとお世話になっている、アナマリアさんだった。ここ二週間ほど、大きなバザーの準備に、スクールの試験もあって、ゆっくりできることが少なかった。それを知っているアナマリアさんは、私に気をつかってくださったのだろう。
ノイズ殿下は夕方からお客様との会食だから、今日は約束していない。時計を見れば、15時半。ここのところ外食が多かったから、今日はシチューでも作って老師とゆっくりいただこうかしら……そう考えて、マーケットで野菜と肉を買って帰ってきた。
 
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| 創作覚書 | 20:45 | comments(0) |
薄氷のフォスフォラス 二
(私にできることは、何だろう。)

ホットミルクの入ったカップを手に、デュカは窓から星空を見上げ、考え込んでいた。
 
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| 創作覚書 | 18:31 | comments(0) |
薄氷のフォスフォラス 一
ぴいちく、ぴいちく。かわいらしいさえずりで、部屋の主・デュカはゆるゆると瞼を開けた。
ベッド横の開けっ放していた出窓に、3羽の小鳥がとまっている。

「おはようございます。いつも早いですわね……。」

目をこすりながら、デュカは大きなベッドを降りた。
キャビネットの上の小さな紙袋を開け、隣に置いていた小皿に中身を移す。さらさらと流れるパンくずがすべて入ったのを確認して、こぼさないようベッドに戻り、それを出窓に置いてやった。

(今日は休日、スクールはおやすみ……)

パンくずをつつく小鳥たちを見ながら、今日はどうしようかしらとぼんやり考えているところに、ドアがノックされる音が響いた。
 
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| 創作覚書 | 16:15 | comments(0) |
高貴な光が失われる日
すべてを隠さずに語ろうとは思わないし、かつての過ちは誰にも告げずに墓まで持ってゆく。
だがそれは、すべてを一人で抱え込む事とは違うのだと、30年生きて私はようやく理解できた。
教えてくれたのは、臣下である唯一の友。他愛ない話をしながら酒に付き合ってくれるだけで、暫し国王ではない自分でいられる。それだけで救われており、それだけで十分だと思っていた。
しかし、友は私を、沼に沈みゆくしかできない私の手をつかみ、引きあげてくれた。
……友がいて、よかった。オルフェが友でいてくれて、よかった。

「ふむ。」

長年の蟠りが嘘のように晴れ、徹夜であったというのに気分は悪くない。
一人になった私室。カーテンを開けると、夜明けの光が優しく部屋に満ちた。窓から望む城下には、早起きの人影がちらほらと動いている。その中に、見覚えのある大きな人物を見つけた。

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| 創作覚書 | 19:55 | comments(0) |
国王の浸食 三
「警備隊長に、現副隊長である、シルヴィア・ヘルムフリートを推薦いたします。」

もう表舞台に出ることがなくなったセイルーン小国国王は、椅子に座ったまま、私をただ眺めている。
視界の端には埃をかぶった小さなワインセラーがあった。使われている様子はなく、温度を保つための魔石は、取り換えられることなく朽ちていた。
私は、何もできなかったのだ。
 
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| 創作覚書 | 03:58 | comments(0) |
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