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妖怪の憂鬱 マイナス
覚書なので、こう、文章としては成り立ってないです。
漠然とした雰囲気をとりあえず出す、ネームみたいな。というかそのくらいしかまとめる力がない。

そういうのをかきとめていきます。覚書で。
ノベルとかではないので、よみにくいです。すいません。






************


そこは 小さな小さな集落。
寄り集まった人間達は、皆眉をひそめ、黙りこくっていた。



もう、家畜は皆食われてしまったのだ。
力あるもの、勇気あるものは皆討伐に出かけ、
そのうちの誰一人とて帰ってはこぬ。

ただでさえ小さな集落に残った人間は、
年老いた老人、
乳飲み子を抱えた母親や、
まだ自分を守る力もない子供、
討伐に出た夫を待ち続ける女達だった。

男どもは、もう帰らぬだろう。
恐らく家畜と同じ運命を辿ったのであろう、
かの化け物の唸り声が、遠くから、 ただ ひくく ひくく
集落を吹き抜けてゆくのが、何よりの証拠であった。
その風が吹き、大地を静かに揺らすたびに、
母親は、わが子であろうとなかろうと、震える子を抱きしめ共に震え、
女達は痛々しく顔をゆがめ、夫の名を呟いた。

年老いた老人の中でも、とりわけ皺の深い老婆が 重い口を開いた。

 このままでは、一人一人、あの化け物に攫われて食われてゆく。
 私らはおそらくあとまわしだ、まずは子供 そして女が消えてゆくであろう。

老婆の言葉は、外を吹き荒ぶ唸り声に、ゆるりとかき消される。
しかし、皆の心には重くのしかかった。

 どうすれば。

 どうすれば、私達は平穏な暮らしを取り戻せるのか。

 このままでは、皆食われてしまう。

 たすけて、たすかりたい。

次々と、小さな震える声が続いた。
それは老婆の声と同じく、頼りなく空気に溶けていった。


老婆は、ゆっくりと顔をあげ、周りを見回した。

 …退治が できぬのならば。

皆も、ゆっくりと 老婆に眼をやる。
一人残らず視線を絡め 一呼吸おき 老婆はとんでもない事を口にした。

 …ここにいる誰かが、生贄となろう。
 死には、せぬ。
 あの化け物を、体に封じ込めるのだ  、と。

皆、恐怖の色を瞳に浮かべ、ざわりと声をあげ、周りの者を見回した。
そのような役、進んで誰がなるのか。

しばらくのざわめきがやみ、再び静寂が訪れた。
皆の視線は、老婆に向いている。
一人が、尋ねた。

 そのような術を、扱える者がいるのか。

 私だ。

 しかし、誰がそのような役を。   

老婆は細い目をさらに細め、静かに言葉を紡ぐ。

 老人では駄目だ。寿命を少々奪われるゆえ、封印の途中で死ぬ。中断した時の皆の運命は、容易に想像できるだろう。
 母親も駄目だ。子供を育てねばならぬし、一度でも交わった体では、無理なのだ。
 乳飲み子はむろん駄目だ。 体ができておらぬ 邪気にあてられて、病をおこす。
 …できるのは、乳飲み子ではない子供だ。
 恐れるな。他人の子は使わぬ。
 ……我が娘よ。お主の娘 私の孫を、生贄とせよ。
 …死にはせぬ。皆の命を救え。

老婆の娘は、悩まず、静かに頷いた。聡明な娘であった。
ただ、自分の腕で眠る まだ幼い娘をぎゅうと抱きしめ、
ただ、はらはらと 静かに涙をこぼした。








************








幼い娘は、まだ五つだった。
何が怖いかとか、こうだから怖いかとか、そんなものはなく、
ただ漠然と怖かったのだ。
その怖さは、祖母と二人きりで小さな部屋に入ったあたりから少しづつ大きくなっていった。
草の汁を煮詰めたどろどろしたもので 妙な模様を素肌にくまなく描く祖母の頭をぼんやり見ている時には、
心臓が妙にはねて 苦しかった位だ。
しかし、描き終えた祖母がしわくちゃの顔をほころばせながら、優しい声で呪文のようなものを唱えている間は、
なんだか体が温かくなり、少し落ち着けた。


その後、綺麗に模様を洗い落としてもらい、
いつものような簡素な服ではなく、綺麗な鶯色の花嫁衣裳と、薄緑の透き通ったヴェールを着せられた。

集落の人間は皆、まだ幼い花嫁を一人広場に残し、後ろ髪をひかれる思いで家に篭った。

母が、涙を瞳いっぱいにため、娘を抱きしめた。
ヴェールに口付けをし、 私のお守り と 娘を撫でる。
ぬくもりが、つい と離れ、全くの一人きりになり、数時間。
日が落ちると、じっとりと空気が重くなり、風が強くなってくる。

小さな花嫁には大きい衣装の裾が荒々しく風になびき、ヴェールは顔にはりつきなびいた。
それでも幼い花嫁はじっと立っていた。
怖かった。何かわからないけれど、怖くて仕方なかった。
それでも裸足で地面を踏みしめた。
座ってしまったら、泣き崩れそうな気がして。

…と、風がひとしきり強く吹いた。
同時に、足元に生暖かい くすぐったい感触を感じ、花嫁はびくりと震えた。
恐々、足元に目をやる。

子猫がいた。足に、頬を摺り寄せてきている。
ここにいては危ない   と言い掛け、花嫁は言葉を失う。


猫はむくむくと大きくなり、小さな花嫁を見下ろした。
二本の尻尾が地面をうちつけるたびに、地響きがした。

高いところに見える猫の顔が、  ぐっと下がってくる。
化け猫と、化け猫の瞳程度の大きさの花嫁。

金色の瞳が、幼い花嫁をじいっと見据える。




その大きな鼻筋に、手をのばした。
もう、怖くはなかった。








************








かの老婆が言った通り、娘の寿命は 十年と少し 早まったのであろう。
嵐の止んだ朝、広場に倒れていたのは、妙齢の女性であった。
前日は大きかった花嫁衣裳が、誂た様に丁度だった。


ただ、頭部には化け物の耳が生え、 だらりと体から生えているのは、かの二本の尻尾。
もう、人間ではなかった。


老婆は術にすべてを注ぎ、 晴れやかな朝日を見ぬまま 逝った。
母は、寝息をたてぐったりしたいる 変わり果てた娘を抱きしめた。


幾日、幾月、幾年立っても、娘は美しく、老いず、眠ったままだった。



いつしか母は、老婆になり、
集落の人間とともに、眠り続け老いを忘れた娘の為、小さく 強固な社を建てた。
娘が、いつか起きた時のために。
守れなくなっても、守り続けるように。










娘が、金色の瞳を開け目覚めた。
朽ちた社の天井を見、朽ちた花嫁衣裳を見た。
ヴェールだけは、美しいままであった。


社の扉をあけ、娘は全てを理解した。

集落も、親族も、みんな  もうとうに彼女を置いて滅んでいたのだ。



娘は金色の瞳から溢れる涙をおさえ、その場に頽れる。
化け猫の耳と尻尾も、彼女の感情のままに、垂れた。

彼女は気の遠くなる年月をかけ、化け猫を封じ込めたのだ。
自分の体を、化け物にして。老いも死も忘れて。


静かに嗚咽をあげる娘の後ろで、  社が ほろほろ ほろほろと崩れ落ちていった。




| 創作覚書 | 04:12 | comments(2) |
コメント
あぅぅ……瑠威雅に守ってあげる力があるんだろうか…(´・ω・`)
「テメェの過去にゃ興味ねぇよ。
 これからの事考えろってんだよ。
 ………オレがいるだろうが……」

こんな感じですかね…<過去聞いた後とかの反応
| 璃麻 | 2005/11/17 11:02 AM |
う、うおお。
昔でこそしんどかったでしょうが、流石にあれだけ長生きしてるんで、腰痛程度の痛みだと思います(微妙やな!)
でも多分、ちろっと瑠威雅さんには言うと思うのです。
そんな反応されたらもう、私がたまりません(鼻血←?)
男前。
| KIL. | 2005/11/17 1:22 PM |
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