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隙だらけの出会い
お姉ちゃんとの待ち合わせまで、あと二十分。
今日は公園の時計台の前で待ち合わせてる。

私たちが居るのは一週間前にきたばかりの町。
お姉ちゃんが夕方からの公園使用の手続きをしている間、私は雑貨屋さんに寄ってた。
店員のエルフのお姉さんに見繕ってもらったヘアピンを買って、お姉ちゃんとの待ち合わせ場所に向かったの。

…時間に余裕を持ってたから、五分前には着くはずだった。


 
 

「あの… 私、急いでるんです…」

多分言っても無駄なんだろうなと思ったけど、私は彼らに言ってみる。

「ちょっとで済むからさァ。お嬢ちゃん、お金もってなァい?」

…どうしよう。
私は、カツアゲ…っていうのかな。そういうのにピッタリな路地裏で、二人の男の人に囲まれていた。急に腕を引っ張られて、連れてこられたの。
…ふるえそうな位怖い。
私は、一人でいるとよく絡まれるタイプだ…っていうのは、お姉ちゃんに言われてた。お姉ちゃんだけじゃない、周りの人によく言われる。
こんな状況だけど、昔…その時の彼氏にも呆れて言われたな…なんて思い出す。
そして、大きくなって一人でいることが少し増えてから、とても実感するの。自分が隙だらけなこと。自分でよくわかってる。魔法も強くないし、数年前まで外にでることもなかった。所謂…世間知らず。だから、こういういまどき無さそうな光景に…遭遇してしまう。情けない。
いつもはお姉ちゃんと一緒で、お姉ちゃんはそんな人たちから守ってくれる。でも、そのお姉ちゃんは今はいない。
私はひとりで、ここから逃げなきゃダメだった。

「お金…あんまりないんです…」

「嘘はダメだよォー。さっき雑貨屋さんで結構お金持ってるの見たんだからね?」

…お財布を出して、お金あるか確認したときにみられたのかもしれない。
でもこのお金は、一昨日の公演で稼いだ大切な生活費。じゃあ半分だけでいいよ、なんて優しいことはこの人たちはいってくれないだろう。

「…困るんです。生活費なんです。」

「君エンジェリックウイングでしょ?」

今話してた男の人とは違う人が、私に近づいた。私は反射的に後ろに下がってしまう。
私の背に浮かぶ二対の翼が、壁に擦れる音がした。

「このへんではあんまり見かけないんだよねえ、エンジェリックウイングって。色素が薄いほどイイって聞いたことがあるなあ。」

「イイって何がイイんだよーお前ぇ!このお嬢ちゃん、アルビノみてぇにまっちろだぜ。」

「バーカ、お前の思ってるイイじゃねーよ。」

…どうしよう、私どうやって逃げればいいの?
とてもじゃないけど、この人たちから逃げるなんてできそうにない。
もうお姉ちゃんとの約束の時間が過ぎてる。もしかしたら…気付いて探してくれるかもしれない。
でもこんな所にいてわかるなんて…

「君、恐がらないでよ。 大人しくしてれば、俺達は何も取って食おうなんてしないさ。大人しくしてればね。」

最初に話しかけてきた人よりはまともそうな人だけど、おとなしくついていっても身の安全なんてきっと無い。
一か八かで掌に魔力を込めようとしたけど、最初に話しかけてきた人に腕を乱暴に掴まれてしまった。

「お嬢ちゃん、ダメだって。 大人しく金だしてりゃあ、そんだけで済んでたのになァ?」

腕を掴まれた瞬間、どうしようもなく恐くなった。
止めようとおもうのに、体が震える。
ここで泣けば、通りに聞こえてだれか気付いてくれるかもしれない…
でも、声なんて出なくて。



「ああメンドくせぇ!!おいテメーら このままブツ切りにされたくねえんなら消えろ。」



…突然、その場に別の声がふりかかってきた。
私も、私の前の二人の男の人も、動きを止める。

私たちの視線の先に、黒いローブを羽織った…とても恐い顔の男の人がいた。
正直、今まで私を囲んでいた二人の方がいい人そうに見える。

「…わかったよ。すぐに消えるから コレ とってくれよ。 アンタキーリスだろ。」

「ンだよ、二対一だぜ。やればいいじゃねえか!」

「…お前、それ以上喋ると本当にバラバラになるよ。自分の体見てみな。」

やればいい、と言った男の人だったけど…自分の体を見て、低く唸った。
私もそっと視線を移す。
二人の体には、細い…ピアノ線みたいな糸がまきついていた。

「わかったか。 …そんなわけだ、ほどいてくれ。 アンタ相手にこれ以上できねえのは知ってるよ。」



一人は毒づきながらだけど、男の人たちはどこかへ消えた。

「…あの…キーリスさん、ですか? ありがとうございます…」

目つきは悪いけど、この人は私を助けてくれた。まださっきの震えがとまらないけど、私は目の前の黒い人に頭を下げる。
でも、帰ってきた言葉は…容赦なかった。

「いいか女!テメェがボーっとしてるからそうなってるって事を頭に叩き込め!俺だって助けたくて助けたわけじゃねェよ!」

鋭い目が私を睨みつける。恐い。
でも、言ってることが間違ってるわけじゃなくて…

「…ごめんなさい!私」

「キーリス〜♪」

もう一度頭を下げようとしたところに、とても可愛らしい女の子の声が聞こえてきた。
そっと頭を上げた私は… その時、本当にどうすればいいのかわからなかった。

「姉貴!!!無事か怪我ねえか!?」

つい、ほんのつい今までここにいた黒い人が…今しがた登場した小さな女の子を抱きしめていた。

「ないわよ〜♪ あら、ちゃ〜んとあの子助けたのね!えらいね〜♪」

「当然だ!!姉貴の頼みは俺の命だ!!!」

…小さな、お姉さん(?)に抱きつく黒い人には…さっきまでの面影は微塵もない。





**********





「ほんとよかった、無事で…」

数分後、私はさっきヘアピンを買った雑貨屋さんに戻っていた。
雑貨屋のエルフの店員さんが、にっこり笑ってくれる。
店に居る男二人組が怪しくて、店に居たカペラさん…黒い人のお姉さんに様子を見てって頼んでくれてたみたい。
そんな所から私って隙だらけなんだ…そう思うと、ちょっと情けなかった。

「だいじょーぶだいじょーぶ!キーリスもすぐに来てくれたしね〜♪何よりメイちゃんが気付いたからね♪」

カペラさんは、ニコニコ笑顔で私を見た。
で、キーリスさんはというと…  外のベンチで通りを睨んでいる。
さっき、私にきつい事を言った、って言って…カペラさんに怒られてた。どうもスネてる?みたい。

「あの…本当にありがとうございました! ご迷惑かけて…」

私は二人に深々とお辞儀をする。
私はボーっとしてただけなのに、この二人は大して知らない私を気にかけてくれたんだ。

「いいのよ〜♪さっきの二人、前々から困ったチャンでなんとかしなきゃってトコだったもんv」

「そうですよ。それにディムさん…一昨日広場で歌ってた方ですよね?ああいうお仕事してると、狙われやすいでしょうし…兎に角、無事でよかったです。」

エルフの店員さん…メイさんは、私たちの公演を見てくれたのかな。そこまで考えて、私ははっと思い出した。

「あっ!! お姉ちゃん待たせちゃったままだ!」

そう、お姉ちゃんと約束してるのをすっかり忘れてしまってた。もう…20分もたってる…

メイさんが、急いでいかなきゃ!って、私を店の外まで送りに出てくれた。
カペラさんは外でスネていたキーリスさんの傍に行く。
三人に申し訳なくて…自分が情けなくて、私は三人に頭を下げた。

「重ね重ねごめんなさいっ!絶対…後日お礼に来ます!」

「いいのよ♪ さあさあキーリス、スネないの! ホラ、ディムちゃん送ってきて?もう約束の時間オーバーしてるんだから。抱っこして走ってこい!」

「俺だけで!? …いや、姉貴の頼みは勿論引き受けるよ。女、いくぞ」

「はい… って、えええ!?」

…さらに申し訳ないことに、キーリスさんは私をひょいと抱き上げた。往来の目が、私たちに集中する。当然だ。

「時計台だな!?」

「は、はい!」

いってらっしゃ〜い♪と、元気よく手を振るカペラさんと、少しびっくりしながら手を振るメイさん。
抱き上げられたまま待ち合わせ場所についた時、心配したお姉ちゃんとキーリスさんにひと悶着あったのは…当然かもしれない。





**********





「ったくよォ、あんな男、俺達なら何とかなってたんじゃねえのかよォ!」

「うるさいよ。お前は知らないんだ。恐いのはあいつじゃねえよ…あいつの…姉貴がこええんだよ…俺はご免だからな。」

「……??」




 
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