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連れてって
 
「ねえ、買い物連れてってよ!」

 
今日は迷わずレアなN定食や!
若干呆れ顔のリオンさんから、定食の乗っかったお盆うけとって席についた。
白いたきたてのごはん、焼き鮭、ホウレンソウのゴマ和えに、プルプルとした煮凝りののっかった豚の角煮、湯気をたてる豆腐の味噌汁。
そして…定食ではレアな今日の納豆は、大粒の黒豆納豆や!
しっかり混ぜて、醤油で味付け。持参のカラシを添える。

すごいわ、この完璧な風情。異国のメニューではあるけど、まあ元々セイルーンはそのへんごった煮状態やから、めっちゃ珍しいわけでもない。
でもまあ普通はあまり出えへん。せやからこそ、食堂でこんなヘルシーメニューを食べれるっちゅーのはすごい幸せや。ちゅーかもう、こんなメニューを入れてく
れる食堂の女王、リオンさんが最高や!!

…っていう感じの視線をリオンさんに送り続けてみたけど、リオンさんは一瞥しただけで特にリアクションはくれへんかった。
ええんです、リオンさん。その冷たい所も正直たまらんのですわ。

とはいえ、定食まで冷めてもーたらかなわへんから、僕はN定食を食べ始めた。
幸せな味をほおばる僕の隣に、食堂のプリンセス…リディアがきて、ちょこんと座った。

「お姫さんやん。昼食べてへんのやったらオゴるで。」

「ううん、僕さっき食べたよ。」

ニコニコ笑うお姫さんの頬っぺたは、いつもの薔薇色。
こないだ色々あった時は元気なかったけど、ここんとこは元に戻って元気そうや。
そんなん見てたら、無理につれてって強引に相談乗ってよかったなあ思うわ、ホンマに。

「そうか。 何や、どないかしたんかいな?」

横からの視線がかなりすごい。
僕はまあ、ごはんに向かいながらたずねてみた。

「トラ助って呼んでいい?」

ムゴフッ

いきなりでごはんが…喉につまった。
お茶でとりあえず流し込んで、僕は、隣のお姫さんをちゃんと見る。

「なんやねんな、急に。」

「別に何って訳じゃないけど。いつまでもあんたって呼ぶのも失礼でしょ?」

「まあそれはせやねんけどな…なんでまたよりにもよってその呼び方なんや。その呼び方するんは、ニナさんだけ…」

…いや、ほかにもおる。 ニナさん、ガキ、リオンさん、そういえば陛下も時々トラ助君ていわはるような…

「…いや、ええわ。意外とおった。 別にええで、その呼び方でも。」

「よっし、ありがと!」

にんまりと嬉しそうに、お姫さんが笑う。
まあなんかまた、最初の頃とちごて…違和感のある笑みが減ってきとる。
ええこっちゃ。
…そう想いながら、僕はとりあえず箸をすすめる。
お姫さんは、なんでかじーっとそれを見てはる。正直ちょーっと食べにくいけど、なんか用事あるんやろ。

「ちょお待ってや。 とりあえず食べてまうからな。」

黒豆納豆をそっと啜る。
ああ、これ大粒やけどめっちゃイケるな。

「お昼からまた仕事でしょ? 用はちょっとだけだよ。待ってるから気にしなくていいよ?」

そうお姫さんは言うけど、せやかてこの距離で結構見られたら気にはなるで?
そう思いながらお味噌汁を味わって…僕はごちそうさんでした、と手を合わせた。

「んで、用はなんや?」

僕はお茶を飲んでから、改めてお姫さんを見る。
じいっと僕を見上げる瞳は、やっぱりキラキラしてて、また可愛らしい上目遣いや。
これそこらの男はイチコロやで…と僕は思た。

「あのね、トラ助さ。今週の日曜休み?」

「今週か?  …せやな、お昼までは僕が今週当番やから仕事やけど、そのあとは休みやで。」

休みやで、って言うた瞬間、キラキラしてる瞳がひときわ輝いた。

「ねえ、買い物連れてってよ!」

「買い物な…って、なんでまた僕やねんな?」

僕はごく普通に聞き返したんやけど、お姫さんは何でか、ちょっとたじろいだ。
まあ、こないだ泣いてもうたあとやし、もしかしたらちょっとは安心して信用してもらえたんかな?

「別に、何でって訳じゃないよ!ただ…こないだのパフェ、また食べたいし。あと買い物もしたいの。ねえ付き合ってよ。」

「ああ、パフェな。こないだえらい食べてたしなあ。ええで。 でも買い物て何買いたいんや?」

「そうそう、今度はじっくり食べたいんだよ! んで服が欲しいの!」

「服なあ…お気に入りの店とかあるん?」

「えええと… あんましこの辺のは知らない。」

ちょっとしゅんとするお姫さん。
しかしまあ、なんや最初の頃とちごて…ほんま素直に感情出すようになったなあ。
最初が最初やっただけに、僕はちょっと嬉しぃになった。
この子の成長、見てる感じやわ。

「ほな、僕がええ店つれてったるわ。多分お姫さん、君やったら好きそうな店あるで。」

「ほんとっ!?」

お姫さんの表情がぱっと咲いた。
君はもっともっと咲けるんやから、出し惜しみしたあかんで、と密かに僕は思うた。







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