Calendar
S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2024 >>
Links
Categories
Selected Entries
Archives
Recent Comment
  • 一週間おわりました。
    ビタ子
  • 一週間おわりました。
    K
  • 一週間おわりました。
    ビタ子
  • わかっちゃいるけど
    K
  • わかっちゃいるけど
    せらこ
  • 復活のめどはたちません
    K
  • 俺達本気モード
    K
  • あけました。
    K
  • 俺達本気モード
    たーた
  • あけました。
    なめ
Profile&Others
<< 蒲公英の恋 二 | main | ウハウハ毛玉製作日記 >>
蒲公英の恋 三
 
「星祭の準備、ほんと忙しそうですね。」
 
紅茶を啜り、彼は問いかけた。
やわらかい蝋燭の光に照らされ、デュカとエミリオは向かい合って座っている。美味しい食事はすませ、会話もそこそこに弾みつつ…最後のデザートを待っている。

「そうですわね、忙しいといえば忙しいですけど…皆楽しんでやっていますわ。やっぱりこの国が一番美しくなる日ですもの。」

星祭に外国の人が興味を持ってくれるのは純粋に嬉しく、自然に笑ってしまう。
神官服をきていないと仕事気分が抜けてしまうのを、デュカはなんとなく感じていた。大体、化粧ですら必要最低限しか…最低限もしない時が多いのに。
いつもより苦も無く普通に喋れてしまうのは、やはり陛下に半ば無理やりさせられたこの格好のせいだ。いきなりこんな格好をしたら不自然極まりない。トライアンフの言ってた「エエ方法」ってこれなのかしら?と、心の隅で考える。
…でももう今日はいいか、とすら彼女は思っていた。苦だから嫌だったわけで、そうでないなら何の問題もないのだから。

「私の父が、昔星祭を見たことがあるんですよ。何度も話を聴いたことがあります。すごく幻想的で、夢の中にいるようだったと。もう一度見たいと言っていました。」
「エミリオさんは初めてなのでしょう?きっとお父様の仰ったことがわかりますわ。 あの日だけは、この国は眠らないのです。」
「真夜中に見ることができるんですよね?」
「そうですわ。真夜中ですけど…とても明るくなりますのよ。星が降って、そして昇っていくんです。」
「降って昇る? 星は、帰っていくんですか?」

まだ見ぬ星祭が、彼はよほど気になるらしい。
なかなか真剣に聞いてくる彼に、自分の仕事を説明するのは楽しかったのかもしれない。少なくとも普段の私生活だの好みだのを聞かれるよりずっと楽しかった。

「いえ… どういえばいいかしら… 降る星と昇る星は、昇る星の方が多いのです。」
「…?」
「降る星は、天に昇った人たちの魂。それが輝き、降ってくるのです。残した家族に会いにきたり、迎えにきたり。」

そう、星祭がこの国で最大の祭である理由は、美しさだけでなくその意味にある。
所謂お盆のようなもので、世界広しといえど、毎年のこの現象はセイルーン小国でしか確認できていない。

「…知りませんでした…自然現象だと思っていたので…」

浮かれていた自分が恥ずかしかったのか、謝る彼にデュカは笑いかける。

「ふふ、それでいいんですわ。ちょっと想いを馳せてもいいし、ただ美しさを楽しむだけでもいい。お祭りですもの。」
「なら…よかった。…昇る星の方が多いのは…ひょっとして新たな魂が昇っていくということですか…?」
「御名答ですわね。今年…には限りませんけど、亡くなった方々の魂が、迎えに来た星と一緒に天へ昇るのです。ただ、迎えに来たとはいっても…明確に魂同士が待ち合わせをする訳ではないですから、星は途中で迷子になったりする事があって…それを見守って全て天に帰るのを見届けるのが、私たち神官の役目なんですわ。」
「そうか…!それで、デュカさんたちが準備をしているんですね…」
「そういう事ですわね。…でも、難しく考えなくていいんですのよ? 多分、実際に星祭を見ればそれを考えている余裕なんてありませんわ。」

くすっと笑うデュカを見て、エミリオは思わず見とれていた。






「あ〜〜〜か〜〜〜ん〜〜〜!!ぜんっぜん進展ないですよアレ!」
「あーまあねえ 確かにいきなりあの格好じゃあ逆に身構えちゃうのかなァ。」
「そうですよ!ああしまった… これやったらエミリオさんにもビショップにもあかん…」

…同じ店に、先ほどまで外で見守って(?)いた二人も移動していた。
ご丁寧に同じようなコース料理を食べながらだ。
トライアンフは妙に項垂れたまま、一口カツレツを頬張って唸っている。

「まーなんとかなるっしょ。楽しそうにビショップも喋ってるじゃない、声までは聞こえないけど。つーかさ この店結構高いけど勿論オゴリよね?」

相変わらずあっけらかんと言い放ち、焼きたてのパンを千切るニナの言葉に、トライアンフはあからさまにイヤそうな顔で口答えした。…いや、若干嬉しそうに見えなくもないが。

「えー! ニナさんの方が先輩やないですかァ!」
「でもコレあんたの作戦じゃない。ホラぁ ここで男みせときなさいよ。リッちゃんとかマリりんだってあんたの先輩よ、オゴらす気!?」
「丁重にオゴらさせて戴きまァす!」

彼の表情が、打って変わって幸せそうなそれになる。
それを見たニナは、心底気持ち悪い奴ねえと思った。
こんなヤツ見るよりもビショップを…と思って ニナはハッとする。

「ちょっとトラ助!!あの二人もう立ち上がってるんだけど!?」
「って えええ!もーちょい会話せんのですか会話ァ!」

見守る二人に気付くことなく、デザートを終えた二人はもう出て行こうとしていた。

「行きますかニナさん!?」
「待ちなさい、コレ残していくわけにはいかないわよ!デザートは遠慮するとしても今皿にあるモンは食べていきなさい!罰当たりよ!」
「そ、それはそうですけど、でも見失っ」
「なんとしても見つけンのよ!あんたが見つけなかったら、毎日100本づつ髪引っこ抜くわよ!」

…流石に髪という言葉の魔力には抗えず、トライアンフは皿の上のものを猛スピードで味わうのだった。


 
| 創作覚書 | 01:45 | comments(0) |
コメント
コメントする