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ふたり 三 / 珊瑚の追憶
魔力の奔流が体に流れ込み、駆け巡る。
乗り物酔いをした時のように頭がぐらぐらする。
耐え切れずぎゅっと目を閉じた。


 
**********



目を、開けた。
さっきと同じ、白い場所にいる。…が、先ほどより狭く感じるのは気のせいだろうか。
ぼうっとする頭を戒めるように首をふろうとしたが、あまりうまく動かない。

ルクスの姿がない。
ただ、目の前に、赤ん坊がいた。その子は、こちらをじいと見ている。

(…誰…?)

白い髪にきらきらと光る燐葉石の瞳、小さいけれど耳はリンクルのそれがついている。柔らかそうな頬っぺたが愛らしい。
ふいにニコッと笑うと、その子は手を伸ばしてきた。なんて小さな指だろう。

(あ)

先ほど無くしたはずの右手が動く。その子の動きにあわせ、手をのばす。その手が視界に入ってようやくわかった。

(私も…?)

目の前の子と同じような赤ん坊の手がそこにある。
手がふれあった。温度が感じられないこの世界で、唯一暖かい。

(ああ、どうして)

彼女は、私の世界の全てだったのに。

突然、ぐらりと世界が揺れた。ああ、だめ、手が離れてしまう。赤ん坊の泣き出しそうな顔がぶれ、視界から消える。ぬくもりも途切れた。

私はその場所から放り出された。急激に視界は暗くなり、目が追いつかない。鼻腔をくすぐるのは、しっとりと重い土や草の匂い。
あの子は、私の片割れはどこにいるんだろう。
あの子は。 あの子は…。

意識が薄れていく。世界はとうに消えた。


 
| 創作覚書 | 23:21 | comments(0) |
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