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白を追う者 四
「った!!!」

魔力の破裂により吹き飛ばされたニナは、何かに激突した。
とはいえ、それは柔らかかった上、受け身をとったのでほとんど痛みはない。

「げっ!!!キモい!!!!」
「えええええ!!ちょお、僕優しィ〜く受け止めたのにそれヒドないですかァァ!!」

小さな彼女を受け止めたのは、先ほどまではいなかったトライアンフだった。
同じように飛ばされたリオンを見れば、同じく先ほどまでいなかった彼女の息子アレックスが辛うじて受け止めたようだ。棒立ちになっていたヨハンは既にケンジに抱えられ、全員無事…と思ったら、リオンは息子を一喝する。
 
「足手まといだって言ったわよ!!」
「それでも来てなんとかしねーと後悔すんだよ!」

ここは引けぬとばかりに、アレックスが叫ぶ。

「へえ…お前も来たのか…お喋りしてる暇なんてないぜ」

憎憎しげに吐き捨てられたルクスの言葉とともに、輝く矢状の魔力が無数に襲い掛かる。

「ニナさん、貸して下さい!!」
「キモいけどいいわ、ほら!!」

括られた髪をひっ掴まれ、一瞬表情が凍るトライアンフだが、彼女の魔力を瞬時に集積して手を振りかざした。
直後、光の矢が降り注ぐ。

「ちょお、キツいんちゃう、お嬢ちゃん。」

すべて止んだ時、そこには、透き通る乳白色の巨大な防護膜を翳して苦く笑うトライアンフがいた。

「キモい!ありがと!」
「よくやったわね。キモいけど。まだ解くんじゃないわよ。」
「わ、わかってますゥー!」

リオンはアレックスの一歩前に立ち、ニナはトライアンフから離れて、いつでも動けるように構えた。
ヨハンを守るケンジを、さらに守るように立つ。

**********

白い空間の破裂により、辺りには白い魔力が、濃霧のようにたゆたう。
通常見える筈の無い「色」が、そこにいる全員の目にはっきりと映っていた。
その中心には、白い髪の女性が二人。

「もうデュカの浄化は終わった。お前達には渡さない。」

(おもちゃをとられそうな子供みたい。)

魔力の濃さにぐらぐらしながら、デュカは思った。
さきほどの『浄化』から、意識ははっきりとせず、体も自由がきかない。そして、自分の中に確かにあった魔力が異質になっているのを感じていた。事実、たしかに珊瑚色だった属性色が消えており、では何色かというとよくわからない。あえて言うなら、色がないように思えた。

なくなった自分の腕を見ると、そのむこうに対峙する皆が見える。
彼らの元に戻りたい。
でも、自分の片割れを捨てることができるのだろうか。

「渡さない…デュカは私の世界だ」

彼女の肩を抱きかかえたまま、呟くルクスの声に呼応し、魔力は再び膨れ、周りの白い霧はそれを取り巻くように渦巻き始める。

(トライアンフに…アレクさんまで… 私、彼に旅立つことを言えていなかったのに。)

自分のために駆けつけてくれた皆。
リオンの隣で、アレックスがこちらを見、立ち尽くしている。
こんな時でも、目で追ってしまう自分に少し驚いた。

「私の方がデュカとずっと居たんだ…もうお前達には渡さない…!!」

唸るような声には暗いものが篭り、双眸には攻撃的な色がぎらつくルクス。
だが、その裏に宿るものを知っている。

(…私には捨てることなんてできない。わがままでも…どちらも失いたくない。)

白い霧はルクス達を中心に目に見えて渦巻き、今や竜巻のようになっている。

「多分ヤバいよね、リッちゃん」
「…吹き溜まりなんてもんじゃないわ。私達に色が見えるなんて尋常じゃない。ヤバいわよ」

ニナに答えながら、リオンは息子を下がらせる。

「おい、デュカ!!お前ッ…」
「いいから下がりなさい!」
「……。」

渋々とアレックスは一歩後ずさる。同い年くらいの女に肩を抱かれているデュカと、目があったような気がした。

「アアアアアアアッ!!!」

ルクスの咆哮が、響く。

| 創作覚書 | 23:41 | comments(0) |
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