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どやし系の魔女とゆかいななかまたち

トリックオアトリート!

トリックオアトリート!

大通り街を歩いていると、威勢のいい小さな魔物たちが近寄ってくるのが、視界の隅で見える。
けれど、正直私にかまう余裕はない。
何故って 見ればわかるでしょ。ものすごーく!急いでいるのよ!
とりあえずお供の二匹(お供というか押しかけてきた居候だわ こいつら)は私の歩調に合わせるのに必死。一匹はほうきで飛んでる訳だけど。
まあ流石に、コレだけ鬼気迫る一行に近寄ってくるのは本当、わけのわかっていない一部の子供だけね。
大抵の子供は、大通りを歩くお菓子袋を持った大人にたかっているわ。そうそう、そういうのにたかって。私にはかまわないでちょーだい!

トリックオアトリート…

トリックオアトリート… ‥

仰々しい門をくぐって大通り街を抜けると、急激に道は狭くなってくる。
大きい街でも、所詮は田舎よ。少し抜けただけでコレだもの。
さっきまでの人の波がウソみたいに、人っ子一人いやしないわ。この方が気楽なんだけれどね。人ごみは嫌いだし。
とりあえず歩みを緩めると、待ってましたとばかりにほうきに乗った蝙蝠が憎まれ口を叩く。
「だからオイラ言っただろー!ギリギリまで何にもしねーからこういう事になんの!ついてくの大変なんだぞコレ!」
「うっさいわね!あんたに言われたくないわよ! 誰の魔法で飛べてると思ってんのよこのバカッ!」
「……。バカッ!」
私の声に続くように、足元を歩く猫が叫び、長い前足で蝙蝠をはたき落とそうとする。
「むほーっ!」
よくわからない雄たけびをあげて、蝙蝠の乗ったほうきが避けようとバランスを崩す。

蝙蝠が文句を言い、猫がはたき落とす……勿論やることギリギリまでしなかった私も悪いけど、こいつら…
あんたたちはいつも同じことを繰り返して楽しいのか、って小一時間くらい問い詰めたいわ。うるさいったらありゃしない!
本来客である(太りすぎて)飛べない蝙蝠と、使い魔召還契約で失敗して以来家に居ついて消えようともしない、異様に使えない変な猫。
魔女の連れは猫や蝙蝠、って相場は決まっているけれど…こんなマヌケな連れだと私が魔女にすら見えないわよ!

そうこうしているうちに決着はついたらしい。今回は蝙蝠がなんとか猫の手の届かない位置に逃げ果せたようね。
「まあ でも…ぜえはあ 残ってて ぜえはあ よかったな その ぜえ はあ カボチャがよー!」
「息整えてから喋ってくれない?」
そうなのだ。ハロウィンに異様な盛り上がりを見せるこの地方では、大きい街でも、ハロウィン当日まで売れ残ったカボチャがあるのは珍しい。
大概二週間前にはどこも完売で、カボチャ農家は儲ける反面 泥棒にも悩まされているらしい。
泥棒除けの魔法を下さいなんて依頼が舞い込んでくる位だもの。そんなもん高くついても用心棒を雇えってのよ。
…とりあえずそんな地方で、カボチャ買いに行くのを面倒がった私は大概なんだけれど、ね。いいのよ、手に入れば。
クリスマス用の星までついてて、それ除いても高かったけど…
「オイラ 息 整った。」
「じゃあまた乱さないように黙っといて。」
「ええええ――――!」
「うっさい!」
「……。うっさい!」
「おぎゃーっ!」
ああもうほら、また始まった…そう私が頭を抱えようとした時、

…スカートの裾が、何者かに引っ張られた。
歩みを止めて見れば、仮装をした子供が二人 じいっとこちらを見ている。仮装とは言え、街にいた子ではないわ。
どう見ても服はボロ。裾は擦り切れてるし、洗ってはいるようだけど…お世辞にも綺麗ではないわね。
街の子供は、きらびやかに着飾ってもらっていたけれど、本当シーツか何か縫い合わせました!みたいな出で立ち…兄妹かしら?
ふわふわと、蝙蝠が近づいてきて子供達を見た。猫も大人しくじいっと、それを見つめてる。
「このちまいの、狼だな!狼!しかも孤児だ!」
「バカ あんたの方がちまいわよ口を慎みなさい!…で、何?悪いけどお菓子は持ってないわよ。街にでも行きなさい。」
多分聞かないだろうけど、ダメもとで言ってみる。
「とりっく!」
スカートの裾を掴んでいない方、兄かしら。そっちが、私をじっと見て威勢良く叫んだ。いや、トリックじゃないでしょ あんたの言いたい方は。
「すいた おなか」
裾を掴んでいる妹らしき方が、目を輝かせて私を見る。……でも 悪いけど。悪いけどッ……!!

「ああもう!!いいこと、とりあえずウチにきてゴハン食べてあったかい格好して一泊しなさい!話はそれからよ!いいわね!?」
…兄妹は顔を見合わせて、嬉しそうに笑ったわ。
「あーあー… 居候二人追加だなーこりゃ!なんだかんだで人がいいんだからなー!」
「……。だからなー!」
二匹がゴチャゴチャ言ってるのを背に、私は兄の方にカボチャを持たせて手を引っ張って歩き始めた。

んなこたー解ってるからいちいち言わなくていいのよ うっさいわね!バカッ!!
 
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